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定期借地権付きマンションはやめておいた方がいいのか?

最近、定期借地権付きマンションを目にする機会が増えている。しかし、「定期借地権付きマンションはやめておいた方がよい」といったアドバイスや、「定期借地権付きマンションは価格が下がりやすい」とする意見が、マンション情報サイトなどで散見される。

では、定期借地権付きマンションは本当に損なのか、それとも条件次第で得となるのか。どのようなケースで購入を検討すべきかについて、以下で分析する。

定期借地権付きマンション

定期借地権付きマンションとは、70年間などの一定期間にわたる定期借地権で借りた土地の上に建てられたマンションのことである。一般的には、ディベロッパーが土地を定期借地権で地主から借り受け、その土地にマンションを建設し分譲することによって、定期借地権付きマンションとして提供される。

定期借地権

定期借地権(ていきしゃくちけん)は、1992年(平成4年)の借地借家法の改正により導入された制度である。主な特徴としては、契約期間満了後に更新されることなく土地が所有者のもとに返還されること、ならびに建物買取請求権が認められていないことが挙げられる。この制度により、土地の所有者は一定期間に限定して安心して土地を貸し出すことが可能となった。

普通のマンションとの違い

一般的なマンションは、ディベロッパーが土地を取得し、その上にマンションを建設して各戸を分譲する形式である。各住戸の所有者は、専有部分の面積に応じて土地の持分を所有している。

これに対して定期借地権付きマンションでは、ディベロッパーが土地を定期借地権により地主からたとえば70年といった期間借り受け、その土地の上にマンションを建設し、各戸を分譲する。住戸の所有者は土地を所有しているのではなく、定期借地権の期間に限定された土地の使用権を有しているにすぎない。また、契約期間満了時には、マンションが建っている土地を更地にして地主に返還する必要がある

定期借地権付きマンションが避けられる理由

土地を所有できない

定期借地権付きマンションのデメリットの一つは、土地を所有することができない点である。定期借地権では、たとえば70年間といった一定の契約期間が経過すると、土地を更地にして地主に返還する義務がある。そのため、土地の所有権を伴わない分だけ、定期借地権付きマンションの資産価値は一般のマンションに比べて低くなる傾向があると言える。

マンションの価値が将来下がっていく

定期借地権付きマンションは、土地付きのマンションと比べて資産価値が下がりやすいとされている。これは、たとえば70年間などの一定期間が経過すると土地を返還しなければならないためであり、契約の残存期間が50年、30年と短くなるにつれて、定期借地権の期限が近づくほどマンションの評価額も低くなる傾向にある。さらに、残存期間が短くなることで担保価値も下がり、住宅ローンの借り入れが困難になりやすく、その結果、売却も難しくなっていく。

損得の比較

このように、定期借地権付きマンションには複数のデメリットが存在し、購入をためらう人も多く、購入しない方がよいと助言する意見も少なくない。ここでは、定期借地権付きマンションのデメリットがどの程度重大であるのかを分析し、他の選択肢と比較検討する。

まず、分譲マンションの購入と賃貸マンションの賃料との比較から、マンションの利回りとして年率3%程度が妥当とされていることを確認しておきたい。

時間価値はどれくらい大きいのか

100万円の資産を一定の収益率で運用した場合に、時間の経過とともにどの程度の資産増加が見込まれるかを確認しておく。

100万円を年間収益率3%で運用すると、30年後には約2.4倍の242.7万円、50年後には約4.4倍の438.4万円、70年後には約7.9倍の791.8万円となる。年間収益率が2%の場合は、30年で約1.8倍の181.1万円、50年で約2.7倍の269.2万円、70年で約4倍の400万円となる。年間収益率が5%の場合には、30年で約4.3倍の432.2万円、50年で約11.5倍の1147万円、70年で約30.4倍の3043万円に達する。

このように、利回りのわずかな差であっても、長期的には資産額に大きな差が生じることがわかる。なお、上記の計算はこちらの資産収益率早見表を参考にしている。

定期借地権マンションの損得

まず、70年の定期借地権の満了時点におけるマンションの価値の損得について考えてみる。定期借地権付きマンションは、契約満了時点で建物の使用権が消滅し、資産価値が実質的にゼロとなる。このとき、土地付きのマンションでは、建物の価値はほとんど失われていると考えられるが、土地の価値は依然として残存している。ここでは、分譲価格の6割程度の価値が残っていると仮定する。ゼロと6割とでは、定期借地権付きマンションはかなり不利であるように見える。

しかし、ここで一つ考慮すべき点がある。定期借地権付きマンションは、土地の所有権が付随していないため、「割安な」価格で分譲されているのが通常である。仮に、分譲価格が土地付きマンションより1割低かったとすれば、その1割相当の資金を70年間にわたって年率3%で運用した場合、約7.9倍に増加する。この結果、定期借地権付きマンションを購入していた方が有利であった可能性がある。仮に利回りを2%と想定しても、資産は約4倍になるため、定期借地権付きマンションはそれほど損とは言えない。

つまり、マンションの将来価値と分譲価格との差額を長期運用したと仮定すれば、定期借地権付きマンションは概ね合理的な価格で提供されていると評価できる。これは、ある意味では平凡な結論ではあるが、マンション購入においては、将来的な損得を総合的に考慮することの重要性を示していると言える。

定期借地権付きマンション購入の注意点

というわけで、定期借地権付きマンション自体が必ずしも損な商品であるとは言えないが、いくつかの注意点が存在する。その一つは、定期借地権付きマンションとは、資産形成を犠牲にする代わりに、購入価格を割安に設定しているという点である。

仮に、立地や設備などすべての条件が同じで、土地付きマンションが8,000万円、定期借地権付きマンションが7,200万円で分譲されているとする。30年後に両者の資産価値を比較してみよう。マンションの運用利回りを年率3%と仮定すれば、先に示した通り30年で約2.4倍になるため、資産価値の差は約1,920万円に達する。定期借地権付きマンションは購入価格が800万円安く、ローン金利の支払い負担も軽減されるが、長期的に見れば、1,000万円規模で資産形成において不利になる点は認識しておくべきである。

つまり、定期借地権付きマンションは、同じ立地や仕様のマンションを割安で購入できる代わりに、将来的な資産価値の蓄積において不利になる商品であると言える。ただし、これは定期借地権付きマンションが土地付きマンションより不利であることを意味するわけではない。上述の通り、価格は合理的に設定されており、浮いた資金を株式投資信託などで適切に運用することができれば、資産形成においてリスク分散だけでなく、より高い利回りを達成できる可能性もある。たとえば、株式の投資信託を年率5%で30年間運用すれば、資産は約4.3倍に増加する。リスクはあるものの、投資信託は資産形成の主要な手段として有力であり、特に現在はNISAによる税制優遇も見逃せない。

このように、定期借地権付きマンションは本質的に資産形成の面で不利となる側面があるため、資産形成を重視する場合には慎重な判断が求められる。

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