不動産

日本の住宅ローンの変動金利は悪いとこ取りだという話

住宅ローンの変動金利と固定金利

日本の住宅ローンの変動金利は、本来の変動金利よりも不利で悪いとこ取りの仕組みになっているというのを説明する。住宅ローンの金利には、固定金利と変動金利がある(固定金利期間選択型という種類もあるがここでは議論しない)。固定金利というのは、契約時点で将来の期間に渡った金利が固定されるタイプの金利のことである。変動金利と言うのは、その時々の金利がその時々の基準金利などに応じて決まるタイプの金利のことである。

例えば、固定金利で2%35年ローンだと、35年間の間金利が2%に固定され、返済額は2%の金利の前提で計算された元利均等返済額や元金均等返済額で返済していく。他方、日本の住宅ローンのように変動金利で1.5%の優遇幅だと、基準金利が2%だと金利は基準金利から優遇幅の1.5%を引いた0.5%、基準金利が3%に1%上がれば金利も1.5%に1%上がるという形で金利を計算し、それに基づいて返済額が変動していく(実際の返済額は返済額の急激な変動を回避する仕組みがあるのでさらに調整が行われている)。

一般的に、固定金利では金利変動のリスクを貸し手側の金融機関が取り、変動金利では金利変動のリスクを借り手側が取るという点が違う。しかしながら、日本の住宅ローンにおいては、実は変動金利は通常の変動金利よりも不利な運用がされてきた。

変動金利と優遇幅

日本の住宅ローンでは、優遇幅というのが用いられている。優遇幅は、30年くらい前に導入され現在まで徐々に拡大してきた。日本の住宅ローンの変動金利では、基準金利から優遇幅を引くことによって適用金利を計算している。例えば、基準金利が2.4%で優遇幅が1.8%だと、基準金利から優遇幅を引き適用金利は2.4%-1.8%=0.6%である。

日本の変動金の住宅ローンの契約では、契約時に優遇幅だけを固定する。その後の金利はその時々の基準金利から固定された優遇幅を引いて適用金利を求める形で運用される。例えば、優遇幅が1.8%に固定されたとして基準金利が2.4%から2.8%に上がったなら、適用金利は2.8%-1.8%=1%になる。しかしながら、この変動金利を計算する仕組みは借り手にとって非常に不利な仕組みとして機能してきた。

下がらない金利、上がる金利

過去30年間、日本の政策金利は低下傾向にあった。政策金利が2%を超えていた1990年代終わりから金利がどんどん下がって行き、2016年ごろにはマイナス金利になるまでに至った。しかし、この過程で本来政策金利に沿って下がるはずの変動金利の適用金利は下がらなかった。金融機関が基準金利を下げなかったからである。

他方、金融機関は新規の住宅ローンの獲得競争のため、優遇幅を拡大していった。つまり、基準金利を下げないことによって既存の住宅ローンの適用金利を高い水準に維持しつつ、新規の借手に対しては優遇幅を拡大することによってより適用金利が低い住宅ローンを提供した。

結果として、日本の住宅ローンの変動金利は政策金利が上がった時には適用金利も上昇するが、政策金利が下がった時には適用金利が下がらない仕組みとして運用されてきた。そのため、日本の住宅ローンの変動金利は、借り手にとって一方的に不利な仕組みなのである。

だから、表面的に変動金利が借り入れる時に有利に見えたとしても、これから先金利が変動していった結果有利ではなくなるという可能性がある。このような点が長期に渡って問題にならなかったのは、日本ではここ30年間金利が低下傾向にあって金利の上昇が起こらなかったので、変動金利が固定金利よりも不利になることがなかったというのがある。しかし、このような日本の住宅ローンの変動金利の問題点を考慮すると、これから先新たに住宅ローンを固定金利か変動金利かで選ぶ場合には注意が必要だろう。

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