不動産

不動産投資の利回りは3%が基本だという話

不動産購入や不動産投資の利回りは3%が基本である。3%というのはインフレ率抜きの実質利回りである。さらに言うと、無リスク利子率1%とリスクプレミアム2%の合計と考えておくと、より応用が利く。

最近、マンション購入や不動産投資がどのような条件で有利になるのか計算していたところ、不動産投資の利回りを3%として計算すると多くの状況で辻褄が合うことを確信した。よって、不動産購入や投資を考える時にはまず3%の利回りで評価してみるのがいいだろう。

確かにリゾートホテルなどリスクの大きい不動産では、より高い利回りが求められる。しかし、オフィスビルやマンションといった多くの不動産投資については、3%の利回りで計算すると合理的な結果が得られることが多い。3%の利回りというのは、歴史的に見てマンションを購入して居住する場合と賃貸する場合で損得が拮抗する水準でもある。また、3%の利回りというのは、JREITが50%くらいの資金を借り入れにより調達し、年5%の分配金を支払うのに必要な利回りでもある。

したがって、不動産を評価する際には、3%の利回りでどのようになるのかを試算してみるのがいいだろう。

不動産の利回り

利回り計算の重要性

不動産投資や購入を検討する場合には、その利回りを算出し、基準となる3%と比較し有利かどうかを判断することが重要である。

そのためには、不動産の利回りを正確に把握することが重要である。簡単なことのようであるが、基本的なことをいくつか抑えておく必要がある。第一に、不動産からの収入を正確に把握すること。第二に、不動産の価値の変動を適切に見積もることである。

以下の説明は、不動産の利回りを「事前」にどのように見積もるかという視点で述べている。そのため、現在の時点では予測不可能な未来の変化については議論していない。しかし、現時点で予測可能な未来の変化については織り込んで判断する必要がある。

地代収入と家賃収入

まず行うべきは、不動産からの得られる収入の見積もりである。自分の居住している不動産を評価する際にも、周りの相場と比べるなどしてどれくらいの収入に値するか(いわゆる帰属家賃)を把握するべきである。土地は地代として、マンションや一戸建ては家賃という形で、オフィスビルなら賃料収入として収入をもたらす。

諸経費

不動産を所有するとさまざまな諸費用が発生する。本当の不動産からの収入は、不動産からの収入から諸費用を差し引いた純収入を指すべきである。マンションであれば、毎月管理費や修繕積立金が発生する。オフィスビルの場合、管理費用もかかってくる。土地建物共に固定資産税や都市計画税がかかる。加えて、土地や建物の貸し出しをするには管理費用もかかる。

この不動産収入から諸経費を引いたものが純収入であり、投資におけるインカムゲインに相当する。

減価償却費と地価の変動

不動産の価値の変化も考慮する必要がある。複数年持つ建物や設備も毎年少しづつ価値が減少していく。建物や設備は毎年減価償却し、一定期間ごとに補修したり更新したりする必要がある。これらの補修や更新の費用は、積み立てる形で上の諸費用の形で支出されることもある。

土地の価値の変動も考慮した方がいいだろうか。多くの場合、土地の価格の変動は予測不能である。しかし、長期的に土地の価格が下がっていくことが予想される場合もある。例えば、日本の地方都市の物件などがそうである。現時点ではそこそこの賃料収入が見込めるが、長期的には需要の減退によって土地と建物の価値が下がっていくことが予想される。このような場合には、少しづつ価値が下がっていくと想定して利回りを計算する必要がある。

逆に再開発地域のように、開発の進展によって地価が上昇していくことが期待される地域もある。このような場合には、ある程度の土地建物の価値の上昇を見込んでもよいだろう。

このような土地建物の価値の変動は、投資における(負の場合もある)キャピタルゲインに相当する。

利回りを計算する

不動産投資の利回りを的確に把握するには、不動産からの純収入(インカムゲイン)と不動産の価格の変動(キャピタルゲイン)を足して利回りを計算すればよい。この利回りが3%を超えそうであれば、不動産投資としては及第点である。

不動産投資のリスクとリターン

無リスク金利とリスクプレミアム

不動産の実質利回り3%はさらに、無リスク金利1%とリスクプレミアム2%に分けられる。このような利回りの分解は、分析する上で有用である。無リスク金利は、市場環境によって変動することがある。現在の日本では、0%に近かったり、さらにはマイナスであったりする。また、対象となる不動産のリスクの大きさに応じて、リスクプレミアムの大きさを調節することが適当である。

例えば、現在日本は低金利であり、実質金利はマイナスである。このような状況では、不動産投資は利回りが低くても、資金の置き場所として正当化できる。重要なのは、他の投資先とのリスクに応じた相対的な利回りの差である。

不動産のリスクプレミアムの基本は2%である。都心のオフィスビルでは2%のリスクプレミアムが妥当である。しかし、リゾートホテルならリスクプレミアムは4%や5%必要かもしれない。失敗する確率と失敗した時の損失の大きさが大きいからである。

マンション利回りによる具体例

マンションの利回り

5000万円の分譲マンションの利回りについて考えてみよう。3%の利回りだと、年150万円である。しかし、考慮すべきことはこれだけではない。

分譲マンションには、管理修繕費が毎月発生する。固定資産税を支払う必要もある。合計で年50万必要であるとしよう。築年数が一年経つと、分譲マンションの価格もその分だけ下落する。ここではマンション価格の1.6%分、つまり80万円下落したとしよう。部屋の内装を定期的にリフォームするには、一年あたり少なくとも20万円くらいは積み立てておかないといけないだろう。

1.4%分の諸経費と1.6%分の資産価値のキャピタルゲイン(ロス)が発生している。そのため、マンションに年3%の利回りを求めるとすると、6%に相当する300万円の年間家賃収入が妥当となる。このマンションを賃貸で貸し出すとすると、貸し出しの管理費込みで月28万くらいにはなる計算である。低金利で2%の利回り(つまり250万円の年間家賃収入)でいいとしても、月23万円くらいの家賃である。

言い方を変えると、このマンションに住んでいるということは、これだけど便益を年間で得ているということである。

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