インフレに対する一般の見方
最近改めて多くの人のインフレに対する認識と自分の認識には大きな隔たりがあることに気づいた。
一般の日本人の最近の感覚だと、インフレで物やサービスの価格が上がっていくと、現金や預金を持っていると価値が削られていくから、現金・預金以外の株や不動産に手持ち資金を移動させなきゃいけないと考えていると思う。ここ3年日本で起こったことを考えると、このような感覚は正しかったと言える。
でも、このような考え方自体はある意味理にかなっていて正しい面があるんだけど、自分としてはインフレはこのように単純に、現金・預金がどんどん不利になっていくというような単純なものではないとも思う。特に、インフレだからこれから先株価と不動産価格が上がっていくと単純に考えて、株や不動産に投資していくのはどうかと思う。
なぜインフレで株価・不動産価格が上昇するのか
インフレで米・魚・肉といった食料品からいろいろな生活費、さらには建設費などが上昇していっているだけでなく、株価や不動産価格も上がっている。物やサービスの値段が上がっているのだから、株価や不動産価格が上がるのはある意味当然のことだ。しかし、現在の株価や不動産価格は、単純な物・サービスのインフレの影響では説明出来ないレベルで上がっている。
株価と不動産価格の上昇の隠れた要因は、今日本の実質金利がマイナスで資金が預金から株・不動産に移動していることである。インフレ率が預金金利よりも高い状況では、お金を銀行に預けておくとそれだけで毎年価値が少しづつ目減りしていくことになる。そうなると、少しリスクを取ったとしても株や不動産に投資しておく方が賢明だと考える日本人が増えてきた。結果として、資金が預金から株・不動産へと流入し、それが株高・不動産高をもたらしている。
だから、インフレ自体で株価や不動産価格も上がっているのだが、同時にインフレ下でのマイナスの実質金利によって、株・不動産の高騰がもたらされている。したがって、現在の日本の株高・不動産高の状況を理解する上で重要なことは、現在の3%のインフレ率を考えると0.5%の政策金利はものすごく「低金利」であるという事である。
将来金利が上がるとどうなるか
2013年ごろから続く異次元緩和を解消するために、2024年以降日銀は少しづつ金利を上げていっている。現在0.5%の政策金利が12月の政策会合で0.75%に上げられる可能性が高くなっている。この先、日銀は少しづつ利上げを繰り返し、5年後には1.5%くらいまで金利を上げることを計画している。その先、必要であれば日銀によるさらなる利上げの可能性がある。
これから先日本の政策金利が上がっていけば、実質金利が上がっていくことになる。実質金利の上昇は、投資家にとっては預金と比べた時の株・不動産への投資の魅力が減少することを意味する。そのため、実質金利の上昇と共に預金への回帰と株価・不動産価格の低下が起こる可能性が高い。株価・不動産価格にとって重要なのは、インフレ率や政策金利自体ではなくインフレ率と政策金利の差(つまり実質金利)である。
株価・不動産価格の今後
個人的には、現在の高い株価・不動産価格はマイナスの実質金利による一時的な現象であると見ている。現在2.5%ものマイナスの実質金利であるため、預金は株式投資・不動産投信に比べて非常に不利になっている。そのため、投資家としては資金を株・不動産に一時的に移しておくことが合理的で実際にそうなっているという事である。
しかしながら、将来マイナスの実質金利が解消するくらいまで政策金利が上がれば、状況が変わってくるだろう。そうなれば、株・不動産の優位性が大いに減少し預金という選択肢も広い条件の下で理になかったものとなるし、株価・不動産価格もある程度落ち着くことになると予想している。
インフレ下での株価・不動産価格
実は歴史的にはインフレ下では、インフレの初期においてインフレの直接的な影響だけでなく実質金利が低下することによって株価・不動産価格が上昇が起こり、インフレの後期においてどこかの時点で政策金利がインフレ率を大きく追い越し実質金利が急上昇することによって株価・不動産価格が急落するという事がしばしば繰り返されてきた。
今回の日本のインフレの進行においても、似たようなことが繰り返されるのではないかと考えている。
株・不動産に投資すべきか
ここまで読んでくれた人は、現時点で私が株や不動産への投資に反対しているように感じたかもしれないが、そのように考えている訳では無い。
というのは、現在の株価や不動産価格が割高だったとしても、今後5年以上に渡ってマイナスの実質金利が持続する可能性が高いことを考えると、その期間に預金によって失う実質的な価値を考えると株・不動産投資の方がましである可能性も高いからである。つまり、株・不動産が割高だとしても、どれくらい割高かが重要でそれほど割高でないならば、最終的に有利である確率も高いと考えている。