資産運用において、たとえば100万円を貯金したり、国債などの債券に投資したとしよう。一年が経過すると、預金には利息が付与され、債券からは利子(クーポン)が支払われる。このとき、利息やクーポンが元本である100万円に対してどの程度得られたかを示すのが利回りである。
ただし、この利回りの測定方法には複数の種類が存在する。代表的なものとして、単利、複利、そして連続複利がある。本稿では、これらの違いと特徴について確認する。
単利(Simple Interest)
定義
単利とは、元本に対してのみ利息が付く形で利回りを測定する方法である。たとえば、100円を年5%の単利で2年間預金するとしよう。1年目には元本100円の5%にあたる5円の利子が付き、2年目にも同様に5円の利子が付く。したがって、2年後には元利合計が110円になる。
同じことを異なる視点から見ると、100円の元本が2年間で110円になるという結果は、単利で年利率5%と評価できる。このように、元本のみに利息を加算する形で利回りを計算するのが単利である。
単利によって利回りを表すときの元利合計は、次の式で表される。
\[ 元利合計 = 元本 \times (1 + r \times t) \]
\(r\): 年利率
\(t\): 期間(年)
この式において、\(t\)は整数の年数である場合もあるが、半年(0.5)や3か月(0.25)といった分数年で表すこともできる。たとえば、100円の元本が1年半で106円になる場合、単利で利回りを測定すれば、年利率は4%となる。このように、期間を柔軟に扱える点が単利の利便性の一つである。
計算例
100円を単利で年利5%の条件で2年半運用すると、元利合計は次のように計算され、112.5円となる。
\[100\times(1+0.05 \times 2.5)=112.5\]
複利(Compound Interest)
定義
複利とは、元本とそれまでに発生した利息の合計に対して利息が付く形で利回りを測定する方法である。複利には、どの程度の頻度で利息を元本に組み入れるかに応じて、年1回の複利(年複利)、**半年ごとの複利(半年複利)**など、さまざまな種類がある。
たとえば、100円の元本を年複利で2年間、年利率4%で運用するとしよう。1年後には、元本100円に対して4%の利息が付いて104円となる。さらに2年目には、この104円に対して再び4%の利息が付与され、利息は4.16円となり、2年後の元利合計は108.16円になる。
このように、年複利では毎年、その時点までの元利合計に対して利息が付くため、同じ年利率であれば複利のほうが単利よりも元利合計が速く増加する。
年複利によって利回りを表すときの元利合計は、次の式で表される。
\[ 元利合計 = 元本 \times (1 + r)^t \]
\(r\): 年利率
\(t\): 期間(年)
この式では、通常、tttは整数年である。
次に、半年複利の場合を考える。たとえば、100円の元本を年利率4%・半年複利で運用するとしよう。年利率4%であれば、半年ごとの利率は2%となる。
まず最初の半年で、元本100円に対して2%の利息が付与され、元利合計は102円となる。次の半年では、この102円に対して2%の利息(2.04円)が付くため、1年後の元利合計は104.04円となる。このように、半年複利では半年ごとに複利計算が行われる。
半年複利によって利回りを表すときの元利合計は、次の式で表される。
\[ 元利合計 = 元本 \times \left(1 + \frac{r}{2} \right)^{2 t} \]
\(r\): 年利率
\(t\): 期間(年)
この場合、\(t\)は通常、0.5、1、1.5、2、2.5…といった半年単位の値をとる。
複利の表記が便利なのは、利息が一定の期間ごとに元本に組み入れられ、その利息も次回以降の利息計算に含まれるような金融商品においてである。複利の性質により、資産の増加スピードは加速する。
計算例
100円を年複利で年利率4%の条件で2年間運用すると、元利合計は次のように108.16円となる。
\[ 100\times (1 + 0.04)^2 =108.16 \]
また、100円を半年複利で年利率20%の条件で1年半運用すると、半年ごとの利率は10%となり、半年3回分の複利計算によって、元利合計は次のように133.1円となる。
\[ 100 \times (1 + 0.1)^3 = 133.1\]
連続複利(Continuous Compound Interest)
定義
複利の難点として、年複利は1年ごとの運用、半年複利は半年ごとの運用には便利であるが、その中間の期間を扱うには不向きであるという点が挙げられる。この欠点を補う方法として、連続複利がある。
連続複利とは、利子が無限に短い間隔で再投資されると仮定して利回りを測定する方法である。連続複利で利回りを表すときの元利合計は、次の式で表される。
\[ 元利合計 = 元本 \times e^{r \cdot t} \]
\(r\): 年利率
\(t\): 期間(年)
\(e\): 自然対数の底(訳2.718)
連続複利における金利\(r\)は、瞬間短期金利(instantaneous spot rate)とも呼ばれる。
連続複利は、ある運用結果が与えられたときに、それがどれくらいの連続複利利率に相当するかを計算することで、異なる運用期間の利回りを比較する際に有用である。たとえば、100円の元本が1年3か月で110円になる場合と、100円の元本が2年5か月で118円になる場合のいずれがより高い利回りであるかといった比較において、連続複利は便利である。
計算例
100円を年利率5%の連続複利で3年間運用すると、元利合計は次のようにおよそ116.18円となる。
\[100 \times e^{0.05 \times 3} \approx 116.18\]