不動産

駅距離の価値の計り方

ある駅距離のマンションAと、そこより1分だけ駅から離れたマンションBがあるとしよう。このとき、どのようにして駅距離の価値を計算すればよいのかについて解説する。ここでは計算を簡単にするため、20坪の部屋を考える。

二つの駅距離の価値の源泉

坪単価の差

マンションAとマンションBの坪単価の差によって、駅距離の価値の一部を測ることができる。たとえば、坪単価が4万円違うとしよう。このとき、マンションという資産の利回りが3%であれば、年間で1200円の収益差となる。20坪であれば2万4000円となり、これが駅からの距離の違いによって生じる価値、すなわち駅距離の価値の一部である。

坪単価の差の築年数による変化

駅距離の価値のもう一つの要因は、坪単価の差が築年数によってどのように変化するかである。一般的に、築年数が経過するにつれて、駅に近いマンションと遠いマンションとの坪単価差は縮小する傾向にある。これは、駅に近い物件がより多くの価値を失っていくことを意味しており、その差分も駅距離の価値として計上する必要がある。

たとえば、先ほどの例で坪単価が4万円違っていたものが、1年後に3万9000円の差に縮まったとすれば、その1000円分は、駅近マンションAを保有するコストとして駅距離の価値の一部と見なすことができる。

合計すると

以上をまとめると、マンションAとマンションBの坪単価差が4万円であり、それが1年で3万9000円に縮まった場合、利回り3%に基づく収益面での駅距離の価値は1200円、価格差の縮小による価値は1000円で、坪あたり合計2200円となる。部屋の広さが20坪であれば、1分の駅距離の価値は4万4000円という計算になる。

これを一人の通勤時間短縮の価値として捉えると、1日あたり往復2分、年間200日通勤と仮定すれば、合計6時間40分の短縮となる。これは、1時間あたり約6600円に相当する

この計算方法は他にも適用可能という話

上記の計算方法は、他の条件差における価値の計算にも応用可能である。

たとえば、マンションの部屋の向きについて、南向きの部屋Aと西向きの部屋Bがあるとしよう。このとき、向きの違いによる価値は、両者の価格差およびその築年数による縮小の度合いによって、駅距離の場合と同様に評価することができる。その他、各種の設備の違いについても同様の考え方で価値を算定することが可能である。

なお余談ではあるが、一般的に南向きの部屋や上階で眺望の良い部屋など、新築分譲時には高く評価される特徴は、中古マンション市場ではあまり重視されない傾向にある。そのため、分譲時に大きかった価格差が、中古市場では半分程度に縮まってしまうことも多い。

このことは、分譲時にそうしたプレミアムのある部屋を購入することは、実質的に高いコストを支払うことを意味する。将来的な売却価値や価格維持を考慮すれば、これらの特徴がどの程度の価値を維持するのかを冷静に見極めた上で判断することが望ましい。

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