日本経済

少子化はどれくらい大問題なのか

少子化が深刻な問題であるという声は、さまざまな場面で耳にする。しかしながら、具体的にどの程度の「大問題」であるのかについては、明確な数値や根拠をもって示されることが少ない。そこで、本稿ではシミュレーションで少子化の影響がどれくらいなのかを明らかにしたい。

少子化の影響

高齢化との関係

少子化は高齢化とともに論じられることが多い。子どもの数が減少すれば、相対的に高齢者の割合が増加するため、「少子高齢化」という形で問題視される。

この問題の本質は、現役世代の割合が低下することで、少ない人数で多くの高齢者を支えなければならなくなる点にある。結果として、高齢者1人を支える現役世代の人数が減少し、その負担が増加していくことが懸念されている。

子ども世代の減少による側面

一方で、少子化は子どもに対する支出の負担を減らす側面も持つ。実際のところ、年少世代と高齢世代に対する一人あたりの公的支出額には大きな差がないことも多い。そのため、社会的な負担の重さは、単純な人口比率、特に生産年齢人口に対する扶養人口(年少・老年)の比率によって決まると考えていいかもしれない。

そこで次では、出生率の変化によってどの程度人口内での生産年齢人口比率が変わるのかについて、シミュレーションによって分析していきたい。

シミュレーションによる分析

基本的な前提

出生率ごとに人口構成がどのように推移するかを、以下の前提に基づいてシミュレーションした。

  • 出生数は、合計特殊出生率と年齢別出生割合、および該当年齢の女性人口により決定。
  • 各年齢で年次ごとに1歳年をとり、年齢別死亡率に基づいて死亡。
  • 男女の出生比は1.05対1(男性:女性)と仮定。

女性の年齢別の出産割合は令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況から計算した。日本人の年齢別の死亡率はe-statの人口動態調査人口動態統計より取得し2018年度のものを使用した。2018年度のものを使用しているのは、コロナ過の期間を避けるためである。

ちなみに男性が少し多く生まれることと、出産するまでに死亡する女性がいることから、置換水準の合計特殊出生率は2.07くらいだと言われている。

結果

出生率年少人口生産年齢人口老年人口
0.53.3032.5064.20
0.64.4635.9459.60
0.75.7138.8455.45
0.87.0141.2951.69
0.98.3643.3748.27
1.09.7345.1145.16
1.111.1146.5842.31
1.212.4947.8039.71
1.313.8648.8237.32
1.415.2249.6535.13
1.516.5650.3333.12
1.617.8750.8731.26
1.719.1651.2929.55
1.820.4251.6127.96
1.921.6651.8426.50
2.022.8652.0025.14
2.124.0452.0923.87
2.225.1852.1222.70
2.326.3052.1021.60
2.427.3852.0420.58
出生率ごとの人口構成

出生率が2.07(置換水準)であれば、生産年齢人口比率は52%程度に維持される。しかし、出生率が低下すると、この比率は最初徐々に下がり途中から急激に下がる。たとえば、少し前の日本の出生率1.4では49.65%、最新の出生率1.2では47.8%である。さらに出生率1.0では45.11%、出生率0.8では41.29%まで低下する。出生率が1.0を下回ると、比率の低下は加速度的に進行する。

影響の大きさ

この生産年齢人口比率の低下が、社会にどの程度の影響を及ぼすのかを考えるため、以下の仮定を置く。

  • 子どもおよび高齢者1人あたりの社会保障・再分配コストは、生産年齢人口1人あたりの生活水準の半分と仮定する。

このとき、出生率が1.4であれば、生産年齢人口あたりの負担は2%程度増加し、1.2では4%程度となる。この程度の負担であれば、社会に一定の影響はあるものの、制度全体が破綻するほどではない。

しかし、出生率1.0になると負担は7%に、0.8では11%を超える。これは明確に深刻な負担増である。韓国ではすでに出生率がこの水準に達しており、その影響が懸念されている。

結論

以上の分析から明らかなように、現在の日本の出生率水準は確かに懸念材料ではあるが、今すぐ社会崩壊を引き起こすほどの「超大問題」ではない。とはいえ、今後の社会保障制度や労働力の維持にとっては看過できない問題であり、将来に向けての対策が必要である。

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