NvidiaのPERの水準
現在のAI株の高騰が過去のドットコムバブルと違う点は、ドットコムバブルでは収益性の裏付けのない企業の株価が高騰していたのに対して、今回はAI株高騰の中心にいるNvidiaが高収益だというのがある。
Nvidiaは時価総額4兆4522億ドルに対して前期の当期利益は728億ドルで、PER(株価収益率)が48.54倍だった。PER48.54倍というのは、アメリカ企業の平均20倍前後に比べればかなり高めではあるが、Nvidiaほどの高成長企業にとっては容易に正当化可能な水準である。
個人的には、この成長企業としては容易に正当化可能な水準のPERという解釈がミスリーディングでNvidia暴落の引き金になるのではないかと思っている。
暴落シナリオ
Nvidiaの60%にも及ぶ高い営業利益率は、法人向けのGPUの高い利益率に支えられている。法人向けのGPUだけを見てみれば利益率は80%を超えている。この利益率は最盛期のIntelの30%前後の利益率と比べてみると、その高さが分かる。Nvidiaがこの高い利益率を享受できているのは競合製品との間に大きな性能差があるからである。
しかし、ここに大きな問題があると思う。Nvidiaの法人向けGPUに有力な競争相手が現れ価格競争になり、利益率が下がったとしよう。例えば、20000ドルのGPUがあり(開発費込みの)原価が4000ドルで16000ドルが利益で利益率80%としよう。このGPUの価格が6000ドルまで下がると、利益2000ドルで利益率が33%である。
この価格の20000ドルから6000ドルの変化で価格は3.3分の1に、利益は8分の1に減ることになる。しかし、これでも利益率では33%もあり、まだ十分高収益企業である。
つまり、現在のNvidiaの利益率と利幅は歴史的な水準と比べて極めて高く、この利益率と利幅の水準を維持できないと売上と利益が急落してしまうことになる。ここに、Nvidia株の大きなリスクがあると思う。
だから、Nvidiaに有力な競争相手が出現した場合、単純に競争によって売上増加率が低下するだけではなく、製品の利益率が低下する結果売上と利益が急落する可能性がある。そのため、現在PERが48程度あり2倍くらいの売上増でアメリカ企業として平均的な水準のPERになるように見えていても、それが利益率低下による利益の急落によって突然300倍を超える水準になってしまうかもしれない。
この競争相手か何かの理由によるNvidiaの利益率と利益の急落による大暴落というのが、現在私が一番起こりそうだと考えているNvidia株の暴落シナリオである。
おまけ
株式投資において、利益率の高い企業というのはある意味要注意である。利益率の高い企業では、売上増の鈍化と利益率の低下が同時にやってきて、株価が暴落するリスクがある。現在の日本の株式で言うと、アドバンテストがまさにこのカテゴリーに入る。売上だけでなく利益率も急進していることで、株価が高騰しているがどこかで成長が鈍化した時には株価に大きな影響がある危険性がある。