金融

なぜインフレのコントロールは難しいのか

インフレ目標2%維持の難しさ

アベノミクス以降日銀はデフレ脱却のためインフレ目標2%を掲げ異次元緩和を行ってきた。それが成功したのか現在では2023年以降年2%を超えるインフレが続いている。日銀の2%のインフレ目標では、物価上昇率を2%程度に誘導することによって安定的な物価と賃金の上昇をもたらすことを目指している。また、2%のインフレ率は日銀に金融緩和と金融引締めの両方の政策手段の余地を残すためにも重要である。

しかしながら、一般的には2%前後のインフレ率を長期に渡って安定的に達成するのは経験則的に難しいとされている。インフレは一度始まると加速しインフレ率が上昇していき易く、2%前後という低いがゼロではないインフレ率を長期に渡って維持するのは難しい。逆に、インフレ率を0%近辺まで抑え込んでおく方が易しいとされている。

インフレ率2%が難しい理由

インフレ率をコントロールするのが難しい理由の一つに、インフレ率を下げると国債の返済負担が増えるというのがある。

例えば、インフレ率が3%の年が5年ほど続いたとする。新発行の国債の金利はインフレ率の影響を強く受け、インフレ率が低い時には国債金利も低く、逆にインフレ率が高い時には国債金利も高くなる。その後、インフレ率を2%やもっと下に下げようとすると、インフレ率が3%だった時に発行した国債の金利が高いので、インフレ率を下げると国債の返済負担が増える。こうなるのは、インフレ率が高く金利も高い時に発行された国債は、インフレが続くことによって国債の返済負担が減ることを前提として金利が決まっているからである。

国債の金利が通常インフレ率プラス1%で決まるとする。インフレ率が0%だとすると国債の金利は1%になる。この国債の返済の毎年の金利負担は1%である。もしインフレ率が3%ならば国債の金利は4%である。しかし、ここで毎年3%づつインフレしていくならば国債の元本返済負担がインフレによって年3%下がるので、実質的な国債金利負担は年1%である。つまり、国債金利が高くてもインフレ率と対応しているならば実質的な返済負担が大きくなる訳ではない。

しかし、ここでインフレ率3%で国債金利が4%の状況がある程度続いた後、インフレ率を0%に下げようとした場合を考えてみよう。すると、インフレ率が0%にまで下がると、新規発行国債金利は1%程度に下がるだろう。だが、インフレ率3%の時に4%の金利で発行された国債の返済負担は、インフレ率が0%に下がったことによって年4%に増大することになる。3%のインフレによる国債の元本返済負担の減少が無くなるからである。

このようにインフレ率が高い期間がしばらく続いた後にインフレ率を下げようとすると国債の返済負担が増大するために、政府は高いインフレ率と国債返済負担との板挟みにあうことになる。このため、一度高くなったインフレ率を下げるのは比較的難しいとされている。

-金融