日本経済

今後日本の株価、不動産価格、金利はどうなるのか

現在の日本において資産をどこに置いておくのかというのは悩ましい問題である。預金して置くのが安全なような気もするが、長年続く低金利の上インフレも始まっている。株式や不動産は平均リターンでは預金を上回りそうではあるが価格変動のリスクがある。このように、資金の置き場所それぞれが不安点を抱え、どこに投資したらいいのか難しい状況である。そこで、本稿ではそれぞれの選択肢の現在と将来的な見通しについて考えてみたい。

今後の金利の推移

日本の政策金利はマイナス0.1% → 0% → 0.25%と段階的に引き上げられ現在は0.5%である。将来の金利について確定的なことは言えないが、予想することは可能である。現在、1年満期国債の金利は年利0.87%、10年満期は1.62%、30年満期は3.22%である。年限が長い国債ほど金利が高いことから分かるように、市場は今後日本の金利が上昇していくだろうと考えている。

資産の選択肢

資産の選択肢として、10年満期国債、短期債券、株式、不動産、海外資産をここでは考えたい。

大多数の日本人は金融資産の多くを預金として持っている。ここでは話を単純化するため、長期預金は10年満期国債と同等として、短期預金は短期債券と同等として議論していこう。

10年満期国債

10年満期国債の現在の利回りは年1.6%くらいである。しかし、現在のインフレ率は3%くらいなので、インフレ率を調整すると実質的なリターンはマイナスになる可能性もある。ちなみに、10年満期の物価連動国債の利回りは0%近辺である。10年満期国債は表面的にはそこそこの利回りであるが、現在のインフレ率とこれからの金利上昇を考慮すると購入を躊躇う人も多いだろう。10年満期国債は安全ではあるが、インフレと金利上昇に弱いというのが難点である。また、10年間の途中で売却する場合、損失を被る可能性があるのも気になるところである。

短期債券

では、短期債券はどうだろうか。現在3ヶ月満期債券の利回りは年利0.5%くらいである。インフレ率を調整すると実質的には2.5%くらいのマイナス金利である。これから先金利が上昇すれば、より多くの利息を得られるようになるだろうが、現在の低い利回りが気がかりである。短期債券の資金であるため引き出しが容易であるという点は、大きな利点である。しかし、利回り的には10年満期国債を上回ることも難しいかもしれない。歴史的には、短期債券の収益率はタームプレミアムの分長期債券に劣っている。

株式

株価が上昇し好調である。原因は、企業の業績が好調なことに加え、実質金利がマイナスであるために、資金が預金などから株式に流れ込んでいるからである。

しかしながら、今後のことを考えると株式投資には心配な点が多い。現在企業収益から考えると株価は少し割高になっている。このことが許容されているのは、預金の実質金利がマイナスであるために、株価が割高でも預金に比べればましな投資先と考えられていることもある。しかし、これから先金利の上昇とともに実質金利はマイナスからゼロへと動いていくことが予想される。すると、中期的には株価は少し下がる必要があるともいえる。

不動産

都内の新築マンションを中心に、不動産価格が高騰している。オフィスビルなども好調である。不動産価格が上昇している要因の一つは、株価が上昇している理由と同じで預金の実質金利がマイナスであるからである。

そのため、将来的には預金の実質金利のマイナス幅が縮小するにしたがって、不動産価格にも揺り戻しがやってくることが予想される。そう考えると、不動産投資にも懸念点がある。

海外資産

では海外の株式に投資するというのはどうだろうか。ここ5年くらいの円安で、海外資産の価値は上がり、国内資産の価値は下がった。もし、5年前に海外資産に投資していれば円安の恩恵も受けられたため非常に良い投資先だっただろう。為替相場がここ5年円安に振れたのは、日銀の利上げ速度が遅く内外金利差が開いたからである。日本の債券に投資するよりも海外の債券に投資することが魅力的であったので円売りが進んだ。

しかしながら、これからの10年を考えるとどうだろうか。これから先日銀は金利を少しづつ上げていくことになるだろう。すると、ここ5年円安に振れていた為替が円高の方へと降り戻されていくことが期待される。そのことを考えると、海外資産は将来的には相対的に値下がりする可能性が高い。

選択肢を比較する

すべての選択肢に問題がある

では、10年満期国債、短期債券、株式、不動産、海外資産の損得を比較してみよう。インフレがあり今後金利が上昇していくことが予想されるので、10年満期国債や短期債券のような債券類の利回りは厳しいものとなりそうである。一方で、株式と不動産に関しては今後金利の上昇に伴って値下がりの懸念がある。海外資産はというと、日本国内の金利の上昇がもたらすであろう円高は海外資産の価値を減少させることになるだろう。

こう考えてくると、どの資産にも懸念点があり、今後10年の収益率は厳しいものとなりそうである。

結局どういうことなのか

すべての資産の運用先に懸念点がある。これはどういうことだろうか?

全てのお金の置き場所が日本に住む人にとってダメだという形で釣り合っているのである。もしある資産が他の資産よりも魅力的であればその資産に資金が流入し値上がりするだろう。その結果として、どの資産もリスクとリターンのバランスが取れた状況で釣り合っている状態になるのである。

実のところ、ここ2年ほどの株と不動産の価格上昇を支えたのは、預金からの資金移動である。また、円安の原因も円から他の通貨への資金移動である。原因は、他の国が利上げに踏み切る中日本が低金利を続けたことと、低金利の中でインフレが始まった結果実質金利がマイナスになったことの二つである。結果として、日本円、特に円預金、が投資先として不利となり資金が他に移動することになった。この資金移動がここ5年くらいの円安と、ここ2,3年の株高・不動産価格上昇の原因である。つまり、過去数年に渡って資金が移動したことによって価格が変化し新しいそれぞれの資産のリスクとリターンが釣り合っている状態に移行したのである。

振り返ってみるならば、5年前が投資先を変えるチャンスの時期だったことが分かる。あるいは3年前が投資先を変える最後のチャンスだった。その後、円安が進みインフレが始まり、それらが株高と不動産高騰をもたらした後では、もう資金を移動させる機会を逃してしまったのである。

-日本経済